原住民ネブリャン
原住民ネブリャン(英語: Native Nevreans)とは、タル西部、ネブリャン族の発祥地であるネブリャ地方(ネブ山脈~ベトラの一部)を出身とし、それ以外の地域の文化と混じっていないネブリャンを指す。
この記事では、ネブリャ地方に住まう原住民ネブリャンの伝統、ネブリャン族の本来の文化形態について述べる。
ネブリャ地方は都市化されておらず、他の地域とは大きく異なる独特の部族的な文化形態を持つ。
ベトラ地方の文化はレイン歴33年のシーグ軍西部侵攻により壊滅するため、現在ではネブ山脈の集落だけが原住民ネブリャンの文化を保ち続けている地域となっている。
文化
美しい男性達が主体となり、男性同士の恋愛をテーマとした戯曲を奏でる華やかな歌劇文化や、伝統芸能を軸とした非常に独特の恋愛様式古来より持ち、定番の物語と役回りや作法などを持つ。
恋愛は舞台上での役や物語から日常へ隔たりがなく、配役段階から意図されることも多い。男性同士の恋愛が主であるが女性同士の恋愛をテーマとした戯曲も多い。いずれも舞台配役は男性のみによって構成される。
男女共に行うものとしては弓矢の文化があり、特に女性にとって重要な意味合いを持つ。
言語であるネブリャ語は詩や音楽を基調としたもので、アイヌやアボリジニのような口承文芸。文字が存在しないため情報の全てを口頭、羽根の色の組み合わせ、踊りのパターンなどで伝える。このような事情から、歌と音楽が中心の文化ではあるが歌詞や楽譜は存在しない。
恋愛と生殖が全く異なる役割として分けられているため、性文化に関しては都会のネブリャンや他のエルタス人とは感性が大きく異なり、厳密な生殖目的以外での性的行為を一切行わない。男性達による歌や演劇の中にはやや官能的な内容も存在するが、あくまで表現の中でのみに納まる。
社会
つがい関係だけでなく、社会全体で女性が男性を非常に大切にする。男性が自由に空を飛び翼をきらめかせることのできる社会が美徳であり、望ましい社会とされる。生活・文化様式において男性が主に演劇の表舞台に立つのに対し、女性は舞台裏から普段の生活のための技術面での協力に専念することが多い。
また「ジュダ」の概念が存在するがゴールドリングにおける扱いとは役割や意味が異なる。(後述)
美しいネブリャンの男性は死んでも魂は不滅で、輝きと共に蘇ると言われている。
女性
自分と夫の食事や危険などの生命管理、採集や狩猟や家畜の共有などの食料調達、生殖及び卵や子供の世話、危険生物からの防衛、男性達の芸能活動が途切れないように守ること等の現実的でシリアスな役割が当てられる。
生活のための技術面に秀でており、古くより山岳や断崖の難所に集落を築いてきたため、巧みな協働により非常に複雑堅固な家屋を様々な地形に建てることができる。
「女性は寡黙であることが美徳とされ、特に理由もなく男性に話しかけるのは失礼にあたる」という文化があるため慣例的に無口。既婚の女性間には「お互い夫を一番大切にしている」という暗黙の了解の尊重があり、女性同士が同じ価値観で共感しそこから強く協力し合う事の原理になっている。
基本的に娯楽に関した自由がほとんど存在せず、特に自由恋愛が許されていない。(具体的には女性の方から男性に愛の言葉を投げてはいけないとされている等)その代わり女性は日々の生活や演劇の中で見られる男性同士の恋愛模様を眺めて楽しむ。
自由な男性達に自己投影することによって代理的な楽しみを得るという仕組みが原理にある。更に結婚することによって初めて一人前の文化構成員と認められ、既婚の女性は自分の半身となる夫を中心に感情移入し、歌劇を楽しむようになる。女性が結婚することは「その男性の個性を認め、生涯応援すること」とも言え、「夫=その妻の女性のパーソナルな個性」と言っても過言ではない。
成人の儀式で風切羽(翼)を切り落とし、その羽根で矢を作る。この矢はその女性にとって生涯特別なものになる。
歌や音楽、演劇の娯楽に対しては徹底して観劇する側であり、演劇には参加しない。大合唱では演奏に参加することもあるが、低音や打楽器による合いの手、作曲や構成がメインである。
男性
演劇、歌、遊ぶこと、恋愛することなどの幻想的で華やかな役割が当てられる。
次々に新しい愛の言葉や踊りを生み出し、回転させ、役目に没頭することが健康的なネブリャン社会のために重要であり、舞台で役に入り演じ続けることが機能的な伝統となっている。
ネブリャの地内に絶えず男性達の美しい歌声や話し声を響かせるため、必ず歌を習い、常にとても高い裏声での歌唱や会話を楽しむ。特に会話のやり取りはやや一方的なほど積極的で、相手側のレスポンスを待たず「乗る」事を求める。
男性全体が娯楽そのもののようであり、日々気ままに遊び歌い非現実的な世界を作り出すことで対照的な役割を持つ女性達への精神的な癒しを齎す。特に男性同士の恋愛は伝統芸能において演じる役割と普段の生活に隔たりが無いため、演劇の外でも男性同士で愛の歌を歌いあう様子などが随所で見られる。
女性との結婚と男性同士の恋愛は明確に別枠であるため、既婚の男性であっても公然と男性同士の恋愛を引き続き行い、妻の女性もその様子を眺めて楽しむ。
女性から投影を受けて恋愛や遊びを行う男性は女性にとってのアバターのような存在で、結婚することによって女性からの投影が完成する。生涯未婚であることが定められているジュダは除き、既婚の男性は歌劇において重い意味のある役割が与えられる。
子供
まだ男女共に風切羽がある時期の子供たちは空を飛ぶ遊びを好み、行動仕草に性差が無い。(ネブリャンの成長の仕組みの項も参照)
女の子はやがて翼を失い飛べなくなることを学習し、武器の使い方や生活の為の技術等を教わるようになる。
男の子は歌や踊りを習う代わりに、武器を振り回したりしてはいけないことを教わる。
弓矢と楽器の扱いは共通の伝統文化として男女共にどちらも習う。
演劇
社会活動の中核となる文化の一つ。舞台配役はどのような役も全て男性のみによって演じられ、女性は登場しない。恋愛を基本テーマとした様々な種類がある。概ね短い章仕立てのストーリーを連続させたものが主流であり、少しずつ変化しながら歌い継がれている。全体の雰囲気としてはインドのミュージカル映画に似ている。
恋愛感情が性行為に結びつかない文化の関係から、多種多様の精神的でプラトニックな愛を謳った内容が演じられる。恋人役を演じる主役の二者には支配関係が無く、星と月や、太陽と海といった美しく対等である二つのものとして表現される。物語には非常に表現豊かなバリエーションがあり、「宇宙の彼方に住む海の神と星の神が悲しい恋をし、雨が降った」等というものもある。
劇中の役割は重要で、時期ごとに催される大掛かりな楽曲における役回りなどには相応の立場が求められる。
演技者の男性達に対し観衆側である女性達にとっては欠かせない娯楽であり、女性達が常に精神を健康に保ち日々の仕事を持続させるための重要な要因になる。
音楽
非常に古い時代より代々受け継がれており、演劇と並ぶ主な娯楽と文化の一つ。
文字を書くという文化が存在しないため歌詞と楽譜が存在せず、ほぼ全てが即興音楽であると言える。
男性が歌・高音楽器・メロディ・旋律の中心になり、女性が低音や打楽器でリズムをコントロールし、男女共に伝統的な役割が設けられている。
女性の喉が高い声で歌うことに適していないことから、ソプラノが足りない時にはフルートのような楽器を足して代用する。
恋愛と生殖
ネブリャン特有の文化として、「恋愛」と「生殖」が明確に別物として分けられており、社会的な機能として切り離されている。
基本は「恋愛」は男性の役割、「生殖」は女性の役割とされ、この二つは混同されない。
恋愛とは精神的表現の手段であり幻想に接したものであること、性行為は生殖(命を繋ぐ行為)の手段であり現実に接したことであるという前提、また男性には幻想に携わる役割、女性には現実に携わる役割が種族的に定められているため。更には元来ネブリャン同士の性行為には快楽が発生しないため、そもそも性行為を娯楽として扱う考えを持たない。(ネウリアの生殖の仕組みの項も参照。)
男性同士の恋愛は人目に触れることが前提のものであり演劇の内容や日頃の生活などで頻繁に目にできるが、ここから性行為に発展することはない。
性行為及び生殖は女性が有する役割で、つがいとなった男女だけが生殖時期にのみ人目につかないところで行う。
恋愛に絡んだ行為や文化全般が男性同士のものが前提とはなっているが、女性同士の恋愛も少なからず存在はする。男女同士の強い絆や協力関係はあるものの、男女間の恋愛は実は表立って扱われない。(暫定)
子供を産むこと、抱卵など生殖に携わることは女性とって非常にシリアスで重要な事柄であり、グループにおいてはつがいを失った女性が抱卵を手伝う。つがいしかいない場合は男性も手伝う。
食生活
主に採集に頼っており、豆や実などを主食として集める。サーガルほど生物素材には頼ってはいないが、女性達による小動物の狩猟も食物調達の一環にある。時として鹿ほどのサイズの獲物も捕らえる。家畜の飼育もある。食料の調達・維持・管理などはいずれも女性によって保たれる。
民族衣装
民族的な独特の衣類がある。男性の民族衣装については普段は質素な布一枚ということのほうが多く、派手な衣装は祭りの時にしか着用されない。
宗教と刑法
宗教に関しては象徴としてのジュダの男性と、族長的な優れた女戦士が信仰の輪の中心になっている。
刑法に関しては生活習慣の中に取り入れられており、伝統的な生活や文化から外れた者達は大抵不法者と見なされる。立地的に離れているため、ゴールドリング等の都市やそこに住む者達についてはほとんど知らないが、正当な文化や暮らしからあぶれた者達とは近い場所にあるため、忌避している。
ジュダ
特に美しい男性が「ジュダ」の扱いになり、ジュダの男性は生涯結婚せず、民族全体の庇護の対象となる。
男性に対し自己投影することで全性別の平穏を得る文化のあるネブリャにおいて、ジュダが生涯未婚であることによって全ての人から投影が出来る存在であるため。
ネブ山脈ネブリャン
惑星タル西部に広がるネブ山脈上に集落を構えて暮らすネブリャン達。
険しい山脈地帯が占める足場の関係上から、古くからネブリャンだけで完結した生活を行い、伝統文化を永久に保ち続けている。
他の種族に対してあまり友好的ではなく、至って閉鎖的で排他的であると言える。
戦中はシーグ軍による西方侵攻の影響を少なからず受けるが、レイン将軍はサーガルにしか関心がなかった等の理由から、ネブリャンしか存在しないネブ山脈に向けては多少の小競り合いがあったもののそこまで攻め込まれず、ネブ山脈方面の集落はほぼノータッチで済んだ。
外国との交流や貿易などを一切行わず、戦後も文化発展や変貌を遂げることなく、惑星タルと運命を共にする。
ベトラネブリャン
惑星タル北西部、ネブ山脈からはやや外れ、ベトラの森と混じる地域に住むネブリャン達。
ネブ山脈に住むネブリャン達とは違い、他の人々に対して比較的開いた性格をしていたようだ。
そのため戦前までは、ベトラネブリャンと西方サーガル達が「西方ベトラ音楽団」として数年に一度、ゴールドリングの祭りにやってくる形で南部との交流が行われ、その当時は催しの際にやってくる美しい人々の多い歌劇団として知られていた。
戦中はシーグ軍による西方侵攻の被害と大打撃を受け、難民として発生。西方サーガルの生き残り小数と共にゴールドリングに避難・流入した者達が後の都会ネブリャンになる。
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