ゴールドリング
ゴールドリング(Gold Ring - 略表記: GR)とは惑星タル南部、コルビロウス塩湖周辺に存在する国家。沿岸沿いに三日月形に分散する数都市や町村から成り立っており、各地域は陸路または船舶によって結ばれている。
黄金の都とも呼ばれる惑星タル最大の都市でもあり、タルの文明および技術の中心地とも言える。「都会」や「都心部」とは基本的にゴールドリングのことを指す。
戦前までは南部に住むサーガルとアグドナのための場所であったが、近代ではエルタス三種族全てに加えて国外の様々な地域からやってきた人々が集まっている。
ゴールドリング日常漫画シリーズでは近代における生活の一部が描かれている。
概要
約400年前、タル南部で生活を築いていたサーガルとアグドナの共生を基礎にして生まれ、古くより砂漠渡りを専門とし、コルビロウス塩湖とセイルザーンから産出される塩を交易品として持つ。
時代の経過とともに優れた自治体制や道徳、技術、文化、商業を発展させながら現在に至る。
都市内および周辺に野生のタリクシアン生物が発生する環境がほとんど無いため、生物による災害は少なく安全であるが、生活密度が高く人が起こす事件は比較的多い。
各地の交易品が集まるため物資は豊かで、地方ごとの格差はあれども裕福な暮らしをする者が比較的多い。
戦中～戦後は戦争により貿易網が破壊されたことや、西部からの難民が流れてきた問題も合わせて経済と治安が悪化するが、戦後の復旧が急ペースで行われたため比較的早く立ち直る。同時期に新人種として根付いたネウリアの人権問題、技術改革など様々な要因が絡んで社会的環境は大規模な変革を遂げる。
レイン歴70年以降の近代においては三種のエルタス人種に加えて一部のタリクシアン人種も住民として含み、より幅広い多様性と豊富な技術力を持った大都市として更に繁栄している。
国交
東部レオノ地方とは古くから盛んな交易が行われ、野生生物の生体そのものや木材など生物由来の素材を多く仕入れている。ゴールドリングの土地には多くの種類の野生生物やそれらの発生源となるタリクシアン植生が存在しないため、生物由来の資源の調達は東部との交易無しでは成り立たない。
戦前までは西部(厳密には北西部)との交流も祭日等に限って存在し、ベトラ地方のネイティブネウリアと西方サーガルの歌劇団が数年に一度、催事の際に訪れていた。その当時、ネウリア族は単に「催しの日に来る、美しい人々の多い歌劇団の人」として知られているのみだった。戦争勃発後、シーグ軍によって西部の文化が完全に破壊されたこともあり、ゴールドリング・べトラ間の交流は事実上消滅する。
戦後はタルのほぼ全土に及ぶグローバル化と技術の進歩により、シーグとの交易も円滑になる。
建築物
無線機で通話をする都会ネウリアの男性、「ライム」。近代ゴールドリングでよく見られるこの無線機は携帯電話に似た機能を持つ。
裕福層の南方サーガルの食事風景。 - 画集『VILOUS World View #1』より出展
主要な建築物はオレンジまたは黄色がかった岩をくり抜いて造られた建物や砂壁造りの家で、これらはゴールドリングの都市外観の大部分を構築する。
木材などの生物素材は東部から輸入されたものが使われるが、主に補強や家具に使われることが多く、全体が木造造りの建築物はゴールドリングにはほとんど無い。
地域
ゴールドリングマップ(暫定)
主な居住地はコルビロウス塩湖を中心に見て北東～南東部と南西部の大まか二箇所にわかれている。
国家の基本法が存在する一方、地方ごとの経済格差、地域性の強い文化やルール、専門とする機関の違いなどは細かにある。特に北東部と南西部では地域性に顕著な違いがある。
法の強制力は都市の中心部になるほど強く、そのような地域では居住したり店を構えるためには住民登録が必要となるが、郊外に行くほど厳密さは無くなり、セイルザーンのほとりに至っては耕作や建築もほぼ自由。
中心街
ゴールドリング中心街にある首都官庁
北東部の都市に位置する、ゴールドリング国家の心臓部となる領域。
ゴールドリング創始当時から存在し、国の中心機能が大凡ここに集中している。
巨大な一枚岩をくりぬいた古建築街と寺院、沿岸にはエルタス植物の保護林と大庭園など、目を引く建築物や施設が多数あり、遠方から訪れた行商人や旅行者を楽しませる。
政府の施設や庁舎、ジュダや貴族、官僚が暮らす地区もこの辺りに集まる。
人種
サーガルとアグドナの南方種が原住民。戦中～戦後にネウリアの移民が加わり、近代ではエルタス人の三種族全てが集まっている。更に一部のタリクシアン・ストーカーも住民として考慮した場合、計四種類の人種が存在する。
南東間の交易で行商人が行き来するため、レオノ出身の者も住民として多く混じっている。近代ではグローバル化と交通網の確保が進み、シーグからやってくる人も増えている。
ネウリアは戦時中に西方サーガルの生き残り数人と共にベトラ地方から難民してくる形で根付いたが、当初はゴールドリング法内での完全な権利が保障されておらず、また様々な理由から人種差別と迫害を被り、長らく不平等な扱いを受けていた。レイン歴70年以降の法改正で、ゴールドリングの新しい人種として正式に認められると徐々に緩和していく。同様にタリクシアン・ストーカーの一部も条件に応じて法的な人権を認められるようになった。
近代においても主要な人口はサーガルとアグドナの二種が占め、ゴールドリング住民としての歴史が新しいネウリアの人口はこの二種より少ない。サーガルの市民は南方種と東部の混血種が混在し、アグドナの市民よりもいくらか多いほど。人権および住民票を有するタリクシアン・ストーカーは全地域で合わせて数百人程度。
野生生物
ゴールドリングの領域ではタリクシアン生物が大規模に発生する自然環境が存在しないため、タル上のエルタス居住区の中では最も野生生物の危険が少ない。最も近距離のタリクシアン植生域ではマゴイシタがあるが、セイルザーン砂漠を隔てているため森の生物が自力で辿り着くことはまず起こらない。砂漠の生き物が付近に出没することは時折あるが、砂漠の生き物は危険性が少ないものが多くいずれにせよ大きな脅威にはならない。
街中に存在するタリクシアン生物の大部分は犬、牛、馬、豚、ハムスターなど家畜または愛玩動物として改良された生物であり、「野生動物」と言えるものはこれらが野良化したものがほとんどである。タリクシアン・ストーカーのうち、「人」と見なせるような振舞いを持たず、野生動物として路上で生活しているものも含まれる。
ネズミやカニモドキなど人家やその周辺に棲息する比較的小型の生物にはそれなりの種類が見られ、多くは害虫として扱われる。時折砂漠から鳥や羽虫が飛来することもあるが、塩湖周辺に着くと潮風を受けて落下する。
森や東部から危険性の高い生物がショーなどの娯楽や見世物のために生体のまま持ち込まれることは昔からよくあり、扱いには法的な許可や資格が必要となるため基本的には管理されている。滅多には起こらないが、事故で逃げ出したものが街中に出没することはあり、ゴールドリングでの生物による災害や騒動の大半はそのような事由である。また東部から輸入される木材の内部にはイタチの幼体が潜んでいることがあり、気付かないまま成体に成長し、騒動になることがある。
ゴールドリング国内にあるタリクシアン植物はほぼ全てが改良種であまり害が無い。街に入ると鉢植えから街路樹まで様々な植えられているものが目に出来る。これらの植物は観賞用や風除け、敷居などに使われる。エピソード3『縁日にて』で見られる「グメの木」もその一つ。また、タリクシアン植物はコルビロウス塩湖の近くにはほとんど生えておらず、潮風の強い場所では岩や民家の周りもサボテンのような鉢植えを除いてあまり育たない。 また、
塩湖沿岸付近には耐塩性がとても強いエルタス植物のマングローブや汽水で育てる海米の原種がある。ただし、これらの植物はタリクシアン植物の影響を多かれ少なかれ受けており、純粋なエルタス植物ではない。海米の繁殖形態に見られるように、特に花はタリクシアンの特徴が強く表れた、ややグロテスクな外見をしているものが多い。藻類など海中に生えるものはエルタス生物としての要素がより強い。コケや陸上植物類は地球のものとかなり異なる。
中心街にあるエルタス庭園や研究所では、リベンク山脈などから採取された純粋なエルタス植物に近いものが栽培されている。農園などにあるのは耐塩性の強い作物がほとんど。
恋愛
恋愛に関する事柄は人種が多いために、他害性が高いもの以外はバリエーションに寛容である。
アグドナとサーガルのカップルはこの二種族がこの都市を作り上げてきた歴史的背景からほぼ当然のことであり、この二種族の共同家族・異種間愛はごく当たり前にある。
またエルタス人は異なる種族同士で子をもうけることができないため、同性愛が問題視されることは基本的に無い。
ネウリアは他の二種族とは大きく異なった独特の文化的作法を持つが、ゴールドリングに移住した者は他の種族の影響を受けたため、様々な形で性の文化が変化している。
タリクシアン・ストーカーとエルタス人のカップルは変態という扱いになり、好奇の目にさらされたりよくないウワサが広がったりする。これはタリクシアンは人種と動物の中間に位置しており、人権の前提も完全ではないため、獣姦にあたるという理由がある。
娯楽
伝統的なものまたは行商人が持ち帰った品や遠方での体験談や噂話は古くから人々の楽しみである他、様々な玩具、紙芝居、スポーツなどが発展していった。
タリクシアン生物を使った賭博は古くからあり、闘技場で人と戦わせることもある。
レオノとの交易を通じて入荷する、マゴイシタなどの森の原生生物を用いた見世物は野生動物と縁が薄いゴールドリング市民にとっての魅力的な娯楽であり、人がそれらと戦うまたは生物同士を戦わせる様子は特に催しの目玉となる。
「食芸人」達による食に関したショーも根強い人気があったが、一部の内容は時代の変化に応じて大衆の場からは消えることとなる。(後述)
巨大生物を解体する様子は職人のパフォーマンスも練り込まれ、分けられた部位の競りには一般客も参加し、娯楽も兼ねる。
レイン暦50年以降、ネウリアが文明に参加し始めてからはさらに音楽や演劇など華やかな文化が大きく発展した。
祭り
戦前のゴールドリング最大規模の祭り、海神祭りの様子。エピソード3『縁日にて』より。
近代ゴールドリングにおける祭りの様子。様々な出店や屋台が並ぶ賑やかな光景は戦前から変わりないが、この時代では従来の住民層であるサーガルとアグドナに混じって、ネウリア族も同じように祭りを楽しんでいる。よく見るとタリクシアン・ストーカーと思わしき種族の姿も確認出来る。
大きなものでは海(コルビロウス塩湖)への信仰に基づいた海神祭りがある。ゴールドリング北東部、中心街の付近で年に1度開会される。娯楽の少なかった戦前までは、このような祭事がゴールドリング全市民の主要な楽しみであり、多くの人々にとって馴染みの深いものであった。
祭り当日には様々な屋台が路上に立ち並び、非常に華やかになる。軽食類では綿菓子に似たもの、リンゴ飴に似たもの、イカ焼きに似たものなどが売られる。
人々は屋台での買い物や闘技場で開かれる競技を楽しみ、また慣習として塩湖の小島にある海神神社に参詣する。
古くから多くの人々がこの祭りを心待ちにしていたが、戦争開始後、交易ルートが破壊されたため催しに使う野生生物を仕入れることが出来ず、戦争が終結するまでしばらくは開かれることがなかった。
戦争終結後、祭りの再開をいち早く望む人々がレオノ方面へ駆けつけ、復旧に取り組んだため、南東間の戦後再建は非常に急速に進んだ。
エピソード3『縁日にて』では戦前における海神祭りの様子が描かれる。
闘技場
海神祭りでの目玉なる催事場、ゴールドリング闘技場。エピソード3『縁日にて』より。
祭事当日にはレオノとの協力の元で行われる様々な催しが開かれ、その日の目玉となる。
定番のものでは戦士とタリクシアン生物との戦いを見せるショー、「食芸人」による大食い大会やパフォーマンスがある。
戦前までは西方から訪れるベトラ音楽団による歌劇も披露されていた。これも人気のある演目だったが、距離の関係から毎年行われてはいなかった。大凡2〜3年に1度程度の間隔。
野生生物の生体を使う催しでは、凶暴な生物や巨大な生物を扱うため、大抵怪我人が毎回出る。最悪の場合は死人が出ることもある。
闘技の内容ではゴールドリング・レオノの双方から出場者がでるが、生物と戦うのは優れた狩人の多いレオノ出身の人々が主になる。ゴールドリング側は非常事態における会場の脱出経路確保や、生物をひるませるための塩水撒きなどサポートスタッフに回ることが多い。
丸呑みショー
闘技場で催される人気演目の1つ。大盛りの食品や、大小様々な生きた動物を丸呑みする光景を見世物とする。
戦前までは食芸人が行うショーの一環で、丸呑みに限らず大食いや早食い、料理人の料理ショーなども同列に行われていた。
丸呑み・大食い・早食い演目での競技者は主にサーガルとタリクシアン・ストーカー。戦後からはネウリアも参加する。
古くから存在しており、特に娯楽の少ない戦前では大衆的な人気があった。
戦後、「丸呑み」という行為はレイン将軍の影響や、他の娯楽が増えて追いやられるなど様々な理由で地下劇場化する。元々はマグロの解体ショーを見る感覚などと等しい扱いだったが、レインが子供を食べるという話の影響によってフェティシズムを含むものになり、水面下で嗜まれるようになった。
戦後も呑み込むものの内容は戦前と大差無いが、中には人(主に小柄なネウリア)が被害者になる違法なショーも存在した。
宗教
「黄金の輪」という太陽信仰がある他、海(コルビロウス塩湖)に由来する海神信仰がある。
お祈り
海神を祀った神社でお参りをする子供達。エピソード3『縁日にて』より。
海神神社での参詣において
「僕らのゆめによい潮の導きがありますように」
という祈りの言葉と共に一礼が行われる。
『ゆめ』とは寝ている時に見る夢や将来の夢とは異なる意味合いを持ち、生活や日常によって規定された「夢」とは繋がりが無い。
中枢にある意味は「ものがあることより、それを受け入れる余白が変わらず巡ってくることを望む」ことで、「明日も食べ物にありつけますように」というよりも「明日もちゃんとお腹が空きますように」と祈るような感覚に近い。
言わば「目覚めた幻想」のようなもので、具体的には毎朝すっきりと起きることのような、「新鮮さのリセットを日常として行えること」に重点に置いている。
神話・言い伝え
太陽や海(塩湖)にちなんだ神話や言い伝え。
| ビロウス（太陽）の姿見
太陽神が己が姿を確かめるため太古の湖を作り、神の映し身としてはじめの生物が湖から生じた。生物の糞から大地が生じた。全ての水・風・塩が塩湖から生じる。水は深い影のもとに初めからあったので、混じってひとつになる性質をもっている。神の映し身であるはじめのさかなが目を覚ますために海水のしみる痛みを用いた故に人間も傷に塩を塗ると傷むといわれる。塩の痛みによって皮膚が生じ、感触やにおいを感じるようになった。皮膚によって他者が生じた。 |
|---|
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人間 |
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サーガルの言い伝えや風習 |
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アグドナの言い伝えや風習 |
政治
ゴールドリングの警官、GR自警団。左からアグドナ、ネウリアの女性、サーガル。
GR自警団の旗
政治体制に関しては大統領のような国家元首はおらず、血の石による合議制で行われる。議会は「血の輪」と呼ばれる。
レイン暦70年以降には都市象徴として「ジュダ」制度が始まった。
また、直接政治に係わることはないがタリクシアン・ルーターは特殊な立場にいるため、求められれば意見することもある。
血の石はゴールドリング創始当時からのアグドナとサーガルの憲法を保証し問題や危機が起これば会議を行ない、敵性生物や都市設備問題にはGR庭師組合が、犯罪や外敵侵攻にはGR自警団が現場にあたることとなっている。
緊急時を除いた市民生活に係る組織的な運営は戦後に大きく発展した。それまでは旧式のゆるやかな制度から成り立ち、ほぼしきたり的な互助作用に頼るような、法が確立されているとは言い難い状態が長く続いた。
血の石・血の輪
血の石（旧名称：貴族）は純血の南方サーガルと南方アグドナで占められる、ゴールドリング創始当時から続く血族。中心部に住み、ゴールドリング内の政治を担う。
血の石のサーガルは伝統的な茶色い毛皮をもち、貴族同士の結婚・近親交配を繰り返しているためか細身で小柄。
サーガルは古代にセイルザーンに分散していた数部族、アグドナはマゴイシタの周辺から来た数部族がルーツであるといわれている。
血の石による議会は「血の輪」と呼ばれる。
人権
ゴールドリング都市憲法は戦後しばらく(レイン歴70年以前)までサーガルとアグドナの相互利益のため補助的に人権と財産に関する法が存在していた。
レイン暦28年頃急激に移民流入したネウリアに人権がほぼ保証されていない状態だったため、彼らに対する法外な扱いが横行し、レイン歴70年以降に一部改訂され、ネウリアを明確に第三の人種として認め、更にごく一部のタリクシアン・ストーカーにも適用されるようになった。
タリクシアン・ルーターについてはゴールドリング議会と全ルーター間に特別協定が設けられている。
裁判と刑罰
以前は比較的治安が安定していたが、レイン暦40～50年以降には殺人、窃盗、強姦など明確に禁止されている重犯罪が頻繁に発生するようになり、取り締まりが追いつかなくなった。
自警団により逮捕されれば法により罰せられるが、治安の悪いところでは取り締まる前に主観的な制裁や戦闘で正当化されることもある。
重罪人は新しいタリクシアン系食品の毒見に用いられ、死亡するまで人体実験の被験者として拘束される。もしくは「ケフ流し」として数日分の水と食料などとともに南方の不毛地帯に置き去りにされる。
貴族や古くからの住民、公職の者、共同住宅に住む者以外は独自に新規の申請手続きを通さねば住民登録がされず、ただ生活するには大きな問題はなくとも、争いが起こった時に居住地が都市部から遠かったり単に手続承認に時間がかかり、登録のない故に裁判で不利になるといった問題も起こっている。
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