タルの文化と技術
ここでは惑星タルに特有の文化の総合的な概要について述べる。
おおよそ地球における1900年代頃に似た環境だが、地域による経済格差が非常に大きい。
地域にもよるが、部分的に日本の昭和初期を彷彿とさせる形態がある。
テクノロジー
高度な技術を要するものはタリクシアン・ルーターの研究施設など極一部にのみ存在し、公表されておらず一般市民が手に触れる・知る機会は無い。
エルタス人の技術力を測ることが出来る発明品の例としては、後期ゴールドリングには無線タイプライターもしくはポータブルファックスと呼ばれる携帯電話に似た機能の機器が存在し、メールを受信すると下部からレシートのようにメッセージが印刷された紙が出てくる。インク媒体で情報が送受信されるため、一旦書いたことを消すことは出来ない。都会へ行くと巨大な印刷機のような情報掲示板も存在する。
エネルギー事情
マゴイシタの池沼帯で自動車や船の燃料が産出される。このため、ゴールドリングは他の地域とは違い大型建築や機械技術が発達している。一方、東部や北部では生物由来の油脂が主なエネルギー源。
発電技術もあり、特に都市部では複数の発電所から各家屋へ送電ケーブルが伸びている。
建築物
南部では砂岩やセメントを用いた建物が多く、東部では山林など自然を生かしたもの、ネヴリャン地方では岩をくりぬいて住んでいる。
また、原生生物への対策から砦に棲んだり、都会だと市場や商店、工房などにそのまま住み込む例が多い。
トイレ事情
ゴールドリングには下水道や細菌分解式のトイレもある。それ以外の地域については穴を掘ってそこでする、トイレ代わりのツボなどがある。
商業
ゴールドリングなどの都市では毛や着物の染料の入手のために交易が盛んになっている。
南の砂漠地帯では生物質の染料が取れないため、東部や北部の猟師達が染料の元となる動植物を取りそれを南部の住民と取引することによって生計を立てている。交易が始まる以前は南部の地では地味な染料しかなかった。
染料は需要も高く重要な交易品ではあるが、染料以外にもさまざまな生物原料が使われる。エルタス人達は打ち倒した大きな生物の骨や皮や墨袋などを余すところなく利用するため、生物資源自体が交易の中心になる。それらと交換されるのは主にセイルザーン産の「塩」である。
詳細記事:商業
畜産技術
タリクシアンの貝類の家畜を扱うブリーダー、酪農家が存在する。
畜産技術はもともと、北東部~東部で生まれ、やがて交易によって南部へと伝承したため南は交易が始まる前は染料と同じく肉類が貴重で、それまでは魚と植物がメインだった。
砂漠地帯の南部は、森がなく食糧事情に問題があったので食糧確保のため農業が発達している。
東部は自然に恵まれていたためあまり農業をする必要はなかった。
極北部については、森・自然に対する敬意から動物を飼い慣らすことはない。
サーガルは自然や原生生物の気持ちを汲むセンスに長けているため、生物に関わる事に向いている。これは北方サーガル・東方サーガルに顕著で、東方サーガルは畜産・狩猟を文明化していった者達の集まり。南方種はやや劣るが、畜産業に携わる者はこれがある。そのため今となっては南部にも多くのブリーダーがいる。
乗り物
「ウニウシ」に牽引させる荷車 第四話『12人ぼっちの平原』より
タルにおける「車」とは主に人力車や、生物に牽引させる荷車を示す。
自動車の存在については、スクーターなどの小型車は存在する可能性はあるが詳細は未定。
軽飛行機の開発を試みる人々は存在するが、成功はしていない。
コルビロウス塩湖や各地の池沼帯では漁船や輸送船が使用される。
後期北部~東部、南部には鉄道技術がある。最初の列車は戦後レオノからアグドナの技師によって始まる。レオノ・シーグ間を走る物資運搬用のトロッコ列車がよく使われた後、シーグを中心に人を乗せる列車が普及した。ゴールドリングでは市内を結ぶ路面列車が走っているが、砂漠に線路を引くことが難しい関係からシーグ・レオノ・ゴールドリング間を繋ぐ線路は長らく実現することはなかった。
地下鉄は一切存在しない。
教育制度
東部と南部には古くから教育制度と言えるものが存在するが、土地柄の違いから様式は大きく異なる。
東部
レオノでは仕事と教育が一体化している徒弟制度のようなものがあり、子供を幼い時から学校ではなく猟師や職人の下に「丁稚奉公」に出すのが一般的。
レオノの土地柄の関係上、ハンターを志望する若者は非常に多い。ゴールドリングと違い知識中心の教育制度が整備されておらず、危険な生物との実践技術は熟練した大人のハンターたちに同行することでのみ鍛え伝えられていくので、まだ子供とも言える年齢の若者たちに死者が出ることも珍しくない。
南部
ゴールドリングには育児長屋という、集団住宅と保育園や寺子屋を融合したような公共施設が存在し、多くの子供は長らくここを生活と義務教育の拠点とする。南部においてサーガルとアグドナが共同で子供の面倒を見ていくうちに発達した。長屋に所属できるのは生活、教育などの職員をのぞくと、原則規定年齢までのエルタス人の子供と、授乳期の子を持ったアグドナの母親のみである。
育児長屋における初等教育では簡単な読み書きや計算、食料栽培や工作、道徳や法の歴史などの宗教などを学ぶ。また、敷地内の広場、または区域の公的機関や定められた領域を活用し、思い切り遊ぶことで体の動かし方やコミニュケーションなどを学ぶ。多くの場合、教員がいなくとも近所の人々が監視役を務めている。理由あって長屋に所属しない子供は、両親あるいは他の家から直接通い、カリキュラムに参加することになる。
高学年になると職業訓練のために長屋を出る時間が増える。寝食の時間以外はさまざまな職場に出かけ、タクシードライバー、職人、家畜業などそれぞれの関心にあった職業訓練を、その場に所属する大人たちから直接学んでいくことになる。場合によってはそのまま下宿、就職となることもあり、高学年生が長屋を卒業する時期は個人によってさまざま。中には長屋の職員として残るものもいる。基本的にゴールドリング国内、近隣地域での訓練のためレオノのように死者がでることはないが、「道守り」や、対生物資格を必要とする職など、特別な資格や危険な訓練を伴う所属もなかにはある。
北部
古くよりシグの子供たちと勇士・呪術師クランからなる過酷な通過儀礼の様式が存在していた(シグを参照)。
北部で本格的な教育制度が導入されたのは戦後であり、おおむねゴールドリングにならっている。
遊びや娯楽
カードゲームやスロット、そして貝馬による競馬などのギャンブルが存在する。また地球における闘鶏のように、ネズミや虫などの生物同士を戦わせるゲームがある。
都市部ではサーガルとアグドナの子供は色々な遊びを考え付いて行う。ビー玉、けんだま、けんけんぱ、メンコ、貝合わせのようなものなどの他、言葉遊びもある。所属する群れや家族、親の仕事による影響も大きい。レイン歴28年以後のゴールドリングではネウリアも混ざってくるので、複数の文化が入り混じっている。
刑法
地球のようにはっきりした法律が存在するのはゴールドリングだけで、東部(レオノ)は組合の決まりや職人・農家・漁/猟師の土地使用ルール、ネヴリャンは生活習慣のなかに取り入れられている具合で、北部はシーグ統一以前は自然と古呪術がルールになっている。
東部とシーグ統一以前の北部には明確な法律がないが、これは原生生物相手に一致団結しなければならず、人同士で争うことがほとんどないからである。また手柄を奪い合うといったこともまず起こらない。
シーグ建国後は北部にも法律が出来るが、詳しくはまだ未定。シーグ崩壊後にはまた別の法律が生まれる。
殺人の動機については殆どが金品目当て、その序にうっぷん晴らしなどで、稀に痴情のもつれなど(これは主にアグドナ)がある。タリクシアン・ルーター達はエルタス人たちの「罪」を記録していて、ある一定以上の罪を犯した者はタリクシアン・ストーカーに捕食されてもストーカーたちの罪に当たらない、という制度がある。ルーターが通常の「人権」にも該当しない特殊な立ち位置にいることには、このような権利を持っていることに由来している。また、タリクシアン・ストーカーによる捕食はエルタス人同士による殺人とは扱いが違う。
宗教
- 北部:森林や原生生物に対する畏怖に根差したアニミズム的自然信仰がある。
- 南部:ゴールドリングには「黄金の輪」という信仰がある。詳しくは該当項目内にて。
- 西部:ネヴリャンの里の集落や他の地に生きるネウリア達には独自の宗教がある。詳しくは該当項目内にて。
- 東部:様々な宗教が混在している。
飲食物
カテゴリページにて個別で解説 →ビロウスの食物と料理
通貨
元来タルでは全土に及んで物々交換による取引が主流で、戦後のゴールドリングで正式な通貨制度が始まる以前は厳密な通貨というものは存在しなかった。
銅、銀、鉄、染料、香辛料など、その相手が望むものや価値のあるものであれば何でも取引に使うことが出来る。
正式な通貨が発行される以前では貝殻や種が通貨代わりの存在として使われることが多いが、何が使用できるかは地域によって異なり、価格も個人やローカルルールに依存するため具合に非常に大雑把。大人は同じくらいの大きさの金属片などを硬貨代わりの感覚で使うことが多い。貝殻は子供が通貨として扱っていることが多く、漫画第三話『縁日にて』に登場するアグドナの少年ケンは彼個人の趣味として貝殻を集めているため、バクーとエリカに対し通行料として貝殻を要求していた。
ゴールドリングとレオノ周辺では宝石や宝石のようなもの全般を示す言葉として「セビア(cevia)」という言葉が存在し、物々交換に使われた。戦後のゴールドリングでは本格的な通貨制度と紙幣や硬貨の発行が始まり、セビアという言葉もゴールドリングでの正式な通貨を示す言葉として変化する。(後述)
「緑の植物」と称されるエルタス植生の種もまた高価なものとして扱われ、その価値は黄金の粒に匹敵する。
セビア
ゴールドリングとレオノ周辺に戦前から存在する通貨に纏わる言葉。戦前と戦後で概念が異なる。
戦前
通貨制度が存在しなかった頃は食べ物や着る物に交換可能な小さくて綺麗なもの全般を指して使われた。「石のジュダ」とも例えられるようなもので、宝石や宝石と思えるような綺麗な鉱物全般がセビアの扱いになったと思われる。ブロックの欠片など見た目的に価値の無さそうなものはセビア扱いにはならない。
相場や価格については非常に曖昧で、ある人が貝殻を10セビア分の価値があると称する一方で他の人は2セビア分だと称するようなことがザラにある。
通貨ではないためそれ自体が商品となることも出来、セビアとされる宝石を貝殻で買うことも出来る。(しかし基本的には「商品」は衣食住と娯楽に関わるものがなる)
戦後
正式で厳密な価格のある通貨として制度化される。
戦時中までは交易ルートが破壊されるため、ゴールドリングで代々続いていた大規模な催しである祭りが一切開けなくなる。戦争終結後間もなく、祭りのいち早い再開を望む人々が総出でレオノ方面へ駆けつけ復旧に取り組むおかげで、南東間の戦後再建は非常に急速に進む。
この際戦中にゴールドリングに亡命しそのまま住民となったネウリアや西方サーガルの影響で急激に文明が進み、商品の価値が暴騰し経済が混乱に陥り、物々交換では到底間に合わなくなり、貧困や混乱に乗じて強盗なども頻発したため、セビア制度を厳密な通貨として見直すに至った。
それまで紙のお金など扱ったことがなかったゴールドリング市民の間では急速展開する経済成長とも相まって混沌とした状態が抜けきらず、不備が多かったが、レイン歴70年代以降には完全に整備される。
日常生活の習慣
都市部ではブラシのようなもので歯磨きを行う者がいる。
エルタス人の間では、歯にはさまったものをようじで取る行為は全ての地域で一般的である。
例えば北方では植物の茎などをそのまま使ったり、南部では木材加工品を使う場合もある。
挨拶
全土に共通し、怒りや、危険といった、動物的な感情を含む言葉は鳴き声で表されることがある。
本来、北部の原住民の間ではあまり目を合わせない。高い鳴き声でやりとりをし、複雑な言葉は余り存在しない。
南部においては種族間の言語の差異が殆どなく統一されている。挨拶は全て言葉で定義づけられている。こんにちは、さようなら、ありがとう、おはよう、おやすみなどに相当する言葉は一通りある。
東部には学校が無いため書き言葉は発達していないが、殆どの人は言葉を話すことが出来る。挨拶も通じると思われる。
ボディランゲージの挨拶はシーグ軍の敬礼、尾を使った感情表現など。親しい者同士は毛づくろいの交流もある。
ネヴリャンの文化は歌や踊りと密接に絡んでいて、異種族から見ると「どこまでが挨拶」なのか分からなくて混乱するようなものになっている。きらびやかな男性達のやり取りは相手側のレスポンスを待たず「乗る」事を求められるような文化であるため、一方的に感じられるかもしれない。女性は聞き手としての相槌が多く、基本的に自分から話を振らない。挨拶は基本的にされないとしない。ネウリア文化では、女性が用も無いのに声を掛けるのは失礼に当たる。
タリクシアン同士は不明なことが多いが、基本的にタリクシアン同士の場合は挨拶にあまり意味がない。タリクシアン・ストーカーなどに関しては匂いの確認などはある。文化圏にいる者はエルタスを意識してそのような行動を取る事はある。
恋愛や性愛事情
文化圏によって様々な婚姻形態がある。
多数の地域で同性愛は普遍的なものとして扱われる。ただし文化や種族によって感覚は異なる。(詳しくは各項目内で記述)
異種族同士の交際だと組み合わせによっては一般からの受け入れ度合いが変わる。
サーガルとアグドナのカップルはそこまで変な目では見られず特にゴールドリングにおいてはサーガルとアグドナのカップルや家族は普遍的。
ネウリアと他エルタス人のカップルは他者から「騙されてるよ」などとと言われたりすることがある。これはネウリアは調子の良いことを言う者が多かったり、心変わりしやすい傾向があることや、ゴールドリングにおいてほぼ外国人的な扱いであるため、一部に偏見があったり信用が低いなどのレイシズム的な風潮があることが理由。
タリクシアン・ストーカーとエルタス人のカップルは完全に変態という扱いになり、好奇の目にさらされたりよくないウワサが広がったりする。これはタリクシアンは人種と動物の中間に位置しており、人権の前提も完全ではないため、獣姦にあたるという理由がある。
エルタス人の発情期に関して、ネヴリャン地方では季節が決まっており、北方サーガルでもある程度決まっている。しかし、ゴールドリングなどの都市部では特定の時期に発情するという習性は無くなっている。
言語や人名
文字は表現の上においては地球における日本語、英語、漢字、かな文字、ラテン文字に似たものが書かれているが、地球とは違い、タルにおける「文字」は普遍的なコミュニケーションツールというより、記録や分類などに使われる、より専門的な「道具」のようなものである。
これはエルタス人のコミュニケーションが鳴き声やしぐさを多用する獣に近いものであるということが関係している。
識字率は全体的に低く、南部で30~40%、東部では専門職に就いている人が使っている。
北部では元来ほとんど文字は使われていなかったが、シーグ統一後に東部と同じようになる。シーグ王朝中期になって経済が潤ってくると軍事教練のため、主に職人や研究者のための教育設備が整えられる。
当然ながら文字の読めない者もいるが、レオノやシーグの旗のようなシンボルや象形文字は誰にでも分かるツールではある。
使用言語が全て統一しているのはタリクシアン・ルーターのみで、それ以外はみな地元の言葉を使うものと思われる。
個人の人名は日本人のように漢字とかな文字を組み合わせた氏+名の体系の他、英語圏の姓名のようなファーストネーム+ラストネームの組み合わせによる体系、名だけであり苗字が存在しないものなどがある。
サーガルは基本的に苗字の無い人が多いが、ある場合は主に英語圏のようなファーストネーム+ラストネームの体系(苗字のある人は東部や南部などのアグドナとの文化共有のある地域に多い)、ネウリアは漢字とかな文字を組み合わせた氏名の体系、タリクシアンは名だけで苗字が存在しないという体系であることが多い。成人のタリクシアン・ルーターであれば名の前に必ず「Dr.(ドクター)」が付く。
惑星タルの未来
史実上のストーリーでは、レイン将軍率いるシーグ王国によるタル全土に渡る侵略(詳しくはビロウス正史にて)が起こるが、シーグ王国崩壊後はいわゆる「グローバル化」のようなものが興って様々な地域に様々な人種が済むようになる。まず北部は、シーグ時代の研究者や職人達と、ゴールドリングやレオノ地域からやってきた人たちが協力して復興を成し遂げ、シーグは「シーグ公国」としてゴールドリングに次ぐ規模の街に発展する。 またレオノは交易都市として存続する。
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